まずはこちらの画像をご覧ください。

パッと見、ダンボール工作のようだったり、
もしかしたら木彫りのようにも見えるかもしれませんが、
これはプラモデルの表面に薄い紙を貼り付けたものです。
小学生の頃から「プラモデルを紙工作のように扱えないだろうか」と
考えることが何度もあったので、
試しに実験してみたというワケなのです。
今回はそんな " 紙貼り付けプラモデル "
「紙プラ」の制作に至った思い出話をひとつ。
あ、「紙プラ」とは、例によって僕が勝手に名付けた言葉で、
マスクでお面の「マスクメン」とか、
陶芸作品の「ロボットーゲー」とか、
バッグ作品の「ヤスイサ・トモサ」なんかと同じ種類のヤツと
思っていただければ良いかと…
★ ★ ★
さてそんな紙プラですが、大袈裟な書き方をすると、
紙工作とプラモデルの融合は
僕が子供の頃から何度も考えては挫折してきた
素材遊びテーマの1つでした。
小学生の頃の僕は、プラモデルを経てカミロボへ移行した、ということではなく、
実際のところはプラモデルも作り、同時にカミロボも作っていた、という
ゴチャ混ぜ状態で遊んでいました。
とは言うものの、紙工作とプラモデルは全然別物なので、
両方の垣根を取り払って遊ぶようなことはなかったのですが、
日常的にどちらの素材も触っていると
「この両方の特性を混ぜ合わせることはできないものだろうか」と
考える事もあったのです。
例えば、プラモデルに紙のパーツで武装させたり、
紙工作にプラモデルの部品をくっつけたり。
しかしこれが、実際やってみると素材的にかなり相性が悪い。
「水と油」という言葉がありますが、
紙とプラスチックはまさに水系と油系なので
素材的に調和がとれないんですよね。
プラモと紙工作の融合を考えていた小学生時代に作った
オリジナルのSF戦車が手元に残っています。

これは戦艦大和のプラモデルの大砲を
紙工作の戦車に取り付けたものですが…
どうですか、このバラバラ感…(笑)
まぁ、こうなるでしょうね…
でもね、今見ても、この気持ちはよく分かるのです。
あぁ、やりたいことがあったんだな、
でも、なんかしっくりこなかったんだよな…って。
★ ★ ★
僕が小学生の頃は空前のガンダムプラモブームで、
模型店はどこに行っても品切れ状態、
入荷日には早朝から模型店に行列ができ、
大型量販店での行列の将棋倒しや
一部の模型店での抱き合わせ商法が社会問題になったり…と、
とにかく今では考えられないお祭り騒ぎ状態がしばらく続きました。
今思うと、それはすごく不思議な時代だったのですが、
当時はとにかく、手先が器用な子供も、不器用な子供も
スポーツマンの子供も、それほどアニメに興味のない子供も、
みんながこぞってガンダムや
ブームに乗って登場した
その他類似のアニメロボットのプラモデルを作っていたのです。
そういう状況になると、
けっこう無茶な事をするヤツが現れるのですよ。
★ ★ ★
今思い出しても「プラモ的に無茶なヤツ」として、
印象深い友達が2人います。
一人目は近所の年下の子。
今となっては顔も名前も覚えていないこの子は、
1/100スケールの「グフ」を
全てセロテープのみで組み立てていました。
当時のガンダムプラモは、接着剤不要のお手軽なものはなく、
全て接着剤を使わないと完成させられないものでした。
プラモデルには、小さなチューブ入りの接着剤が
入っていたはずなのですが、
彼はそれをどうやって使ったらいいのか
分からなかったのかもしれません。
彼が作ったグフは、プラスチックの青い成形色の上から
めちゃくちゃ無頓着に、
指紋まみれのセロテープが全身ベッタベタに
貼り付けられている状態になっていました…
頭部のツノなどの小さなパーツも、
パーツより大きなセロテープ片に
何重にも覆いかぶせられるような状態で
ベタベタとくっつけられているから、もはや形状が認識できなくなっている…
そして、乱暴に関節を動かして遊んでいたからか、
なんとなく全体的にセロテープの粘着力が弱まっていて、
貝がちょっと開いているみたいに
あちこちの部品がパカパカ浮いてしまっているのです…
でもね、周囲がバカにしても彼は全く気にする事もなく、
そんな急にプラモデル用接着剤なんて言われてもよく分からないし、
え?これって、なんかマズかったですか?ってくらいの自然体なのです。
いやぁ、あのグフはもちろんのこと、
彼のプラモデルに対するスタンスそのものにも
かなりの衝撃を受けましたよ。当時の僕は。
そして2人目は同じクラスの友達 Mくん。
Mは、基本的には真面目にきちっとプラモデルを作るタイプだったのですが、
ある時、設定通りに色を塗るのが面倒くさくなってしまったのか
イタズラ心が騒いでしまったのか、
確かあれは、マクロスの「グラージ」を作っている時に
彼はプラモデルの表面に赤や青や黄色の塗料を
直接ドボドボと垂れ落とし、
筆を使って、流れ落ちる塗料をドロドロに混ぜ合わせて
それで着色完了、完成としたのです。
それは、キャンバスの上にペンキを撒き散らした
安っぽい前衛絵画のようなグチャグチャ感でした…
★ ★ ★
いやぁ… 2人が作ったプラモデルは今でもはっきりと覚えていますが、
どちらもかなりの衝撃でしたよ…
自分で言うのもなんですが、
当時すでに模型雑誌の作例を参考にしながら
ディテールアップや改造をするほどにプラモ作りが上手かった僕としては、
当然彼らの作品をバカにしたのです。
「なにこれー! カッコわる~!」って。
でもね… そんなふうにバカにしながらも、
実は心のどこかで彼らの事が羨ましかったのです。僕は。
セロテープをベタベタに貼り付けられたグフも、
塗料でメチャメチャに汚されたリガードも、
これはこれでなんかカッコいいぞ…
すごく自由で楽しそうだ…
こんなの見たことなかった…
こんな発想、自分の中には無かった…
★ ★ ★
最近になって「プラモデルを紙工作のように扱えないか」と
子供の頃から何度も思っていた事を思い出し、
せっかくなので実験してみようか、と思い立ったとき、
僕は真っ先に彼らの事を思い出しました。
それで思ったのです。
今改めて、あの時の彼らのように
楽しくプラモデルで遊んでみよう、と。
そこで僕は晩酌しながら考えました。
プラモデルの表面が、画用紙みたいになっていたら、
紙工作との間を取り持ってくれるんじゃないだろうか…
モールドがシャープな張り子みたいな感じ?
なんか、そんなふうにプラスチックの表面を紙化することができたら…
その部分さえクリアできたら
あとは普通に紙工作でやっている加工ができるようになるのだから、
とにかく「プラスチックの紙化」の一点に絞って
研究するのがいいんじゃないか。
プラスチックの表面が紙になっていたら、
あのSF戦車の大砲も、本体にうまく馴染むんじゃないだろうか…
★ ★ ★
そんなワケで、時間を見つけては
ちょこちょこと実験を始めたのですが、
プラモデルの凹凸をクッキリと残しながら薄い紙を貼ることは
想像していたよりも難しく、
ジャンクパーツを使って何度も試行錯誤しました。
そんなの、" セロテープグフ " と " 前衛グラージ " の両師匠のように
勢いに任せて自由にやってしまえば良いのだろうけど、
そこはやっぱり、ただただデタラメなことをすれば良いってワケでもなく、
やはり手元に置いておく立体として
自由さの中にもそれなりの「モノとしての力」と言うか
「クオリティ」は欲しいなぁとも思うんですよね。
このあたりのバランスが難しい…
そして、何度か失敗を重ねる中で、
「こんな事して大丈夫か?」って感じの無茶を思い切ってやってみたら
これがうまく成功して、
なんとか1体まるまる紙の質感に変換することができました。
我ながらけっこう無茶な技法を編み出したので、
タイムスリップしてあの両師匠に見せたとしても
「おとなしくて恥ずかしい」って事はないんじゃないか…と
思うのだけどどうだろうねぇ…
やってる事がちょっと大人っぽ過ぎて伝わらないかなぁ…

紙を貼ったら、全体的に紙の繊維に包まれた一体感が生まれ、
なんとも言えない、手馴染みの良い立体になりました。
プラモデル独得のカリンカリンした質感からは
ずいぶんかけ離れた手触りになりましたが、
これは木彫りの風合いに近いのかなぁ。
まぁ、紙の原料は木や植物なので、
木っぽい感じになった、という事で間違ってないのかもしれません。
プラと紙を食いつかせて、プラの表面を紙化できたので、
この上から糊や木工用ボンドを使うこともできるし、
水彩やアクリル絵の具も普通に乗せることができます。
そう思うと、ここからまた夢が広がりそうな感じがありますね。
あと、なんて言うのかな、
紙を貼ったら、逆にプラモデルそのものの
工業製品としてのフォルムがグッと際立って見えてきて
それがすごく良いな、と思っているんです。
この楽しさはちょっとクセになりそうな感じがあるので、
そのうちまた他のプラモデルも紙プラ化してやろうかと思っています。 |