タブラマン
2014年10月25日
 

「TOKYO DESIGNERS WEEK 2014」の特別企画、
「北斎漫画インスパイア展」に
青木克憲氏との連名で作品を出品しました。

この展覧会は〈現代の文化にも大きな影響を及ぼした
歴史上の芸術家達の作品にインスパイアされたクリエイター達が
作品を発表する、過去と現代のクリエイターを結ぶ企画展〉とのこと。

「そのお題が、今年は葛飾北斎の北斎漫画なんだけど、
 北斎漫画をカミロボで表現できるだろうか?」

と青木氏から打診を受けて作品を作った、というのが
Kami-Robo今回の話の流れです。

   ★     ★     ★

北斎漫画とは、江戸後期の浮世絵師、葛飾北斎が
絵手本として発行したスケッチ画集のこと。

内容的には、人物、風俗、動植物、
妖怪変化まで約400図が描かれていて、
北斎はこの絵の事を「気の向くままに漫然と描いた画」と呼んだそうです。

さて、そんな北斎漫画をカミロボで表現する事になったのですが、
僕は普段からカミロボの事を
「立体の落書き」と表現しているので、
立体造形に対しての素描スケッチ的な姿勢を表現する事で
北斎漫画インスパイアというスタンスを表してみようか、と、
そんなコンセプトで進めることにしました。

Kami-Robo   ★     ★     ★

が、しかし…

いざ手を動かしてみると
なかなかコレといった表現に行き着くことができず
かなりの試行錯誤を重ねてしまう事に…
(ツラかった話は省略…)

そして、数々の失敗を乗り越えて
最終的に完成したのが右の画像になります。
Kami-Robo(クリックで拡大できます)

50センチサイズで5体制作しました。

今回、新たに編み出した造形法が、
「ダンボールを手でちぎって糊で貼り付けながら
ちぎり絵の要領で立体を作っていく」というもの。

北斎漫画の特徴である
人体のナマっぽいS字ラインを表現する事と
素描スケッチ的な「造形の即興性」を得るために、
Kami-Roboこの造形法に行き着きました。

「ダンボールをちぎっては貼り、ちぎっては貼り」という作業は
粘土を使って彫塑をしている感覚に近く、
ちぎったダンボールが断面の隙間もろとも
メチャクチャに積み重なっていく事で、
立体に「雑音の層」を感じるというか、
「三次元にラフなアタリの線を引いている」ような
ノイズ感があると言うか…

うまく言えないのだけど
Kami-Robo「空間に立体をスケッチしている」ような、
新鮮な感覚がありました。

ただ、「これはカミロボなのか?」という
カテゴライズ的な問題が気になるのだけど、
自分自身は「これもカミロボ」と
かなり自然に思うことができているので、
まぁそれが答えなんじゃないか、と思っています。

   ★     ★     ★

あ、そう言えば「カミロボ」という言葉の
カテゴライズと言うか、
言葉の意味の話でひとつ思い出したぞ。

ずいぶん前に子供向けのワークショップをした際に
地元の新聞社さんの取材を受けた事があるのだけど、
取材が終わってから3時間後くらいに
再びその記者さんが現れて

「今回の記事を書くにあたって、
 安居さんの工作をカミロボと表記しなくても良いですか?」

と言い出したのです。

言われている意味がよく分からなかったので
詳しく聞いてみると、

「取材内容を上司に報告したところ、上司が
『ロボットってのはコンピューターとかモーターで動くものなんだから、
 その工作はロボットじゃなくて紙人形と表記しなくてはダメだ』と言ったので、
 つきましては、この記事ではカミロボという言葉は使わずに
 " 安居さんの紙人形 " と表記したいのですが」

という申し出だったのでした…

うわぁ…マジか… 記者さん真顔やし…

まぁ、こちらとしてもその上司の発言をきっかけに
30年以上使い続けてきた名称を
変更するわけにもいかないので(笑)

「この作風で作っている立体物は
 カミロボと名付けて発表しているので
 作品名は正しくカミロボと表記していただいて、
 その内容を説明するにあたっては
 紙人形でも紙工作でも、ご自由に分かりやすく表現してください」

と答えたのでした…

…とまぁ、そんな事もあったり、今回も
「北斎」の「ロボット」ではないのだけど
「北斎カミロボ」と名付けていたり、
そういう事が往々にしてあるので
ここらで僕も自分の中の「ロボ」という言葉の意味、
概念を、正しく説明しておく必要があるのではないかと思ったので
ここに書かせていただきます。

いろいろ思い返してみると、
僕が言っている「ロボ」とは、どうやら「人」の事のようです。

しかも「奇抜な人」と表現すると、さらにしっくり来ます。

うん。「ロボとは、奇抜な人」です。

   ★     ★     ★

というワケで告知です。

TOKYO DESIGNERS WEEK 北斎漫画インスパイア展
会期:2014年10月25日(土)〜11月3日(月・祝)
会場:明治神宮外苑絵画館前(中央会場)
http://www.tdwa.com

北斎カミロボの実物と
青木克憲氏制作による北斎カミロボのポスターを展示します。

是非ご来場下さい。

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