先月末、新聞で「フィギュアたちの人生」というタイトルの 展覧会の告知を見つけた。 展覧会の場所は 滋賀県のボーダレスアートミュージアム NO-MA 。 NO-MAは、障害のある方の作品の展示を中心とした 公的ミュージアムで、全国でも例がない美術館だそうだ。 今回の企画展では、フィギュアをテーマに 数名の作家さんの作品が展示されていたのだけど、 中でも僕は新聞に掲載されていた 勝部翔太さんの作品に強く心惹かれた。 (以下、新聞からの抜粋) ─────────────────────────── 軽度自閉症がある島根県在住の勝部翔太さんの「無題」は、 パンの袋を閉じるビニール付き針金で作った 戦士やロボット風のヒーロー200体を並べた作品。 1体3センチほどだが姿形が異なり、 緻密な造形に圧倒される。 ─────────────────────────── これは… どこかで聞いた話と同じような匂いがするぞ…。 しかも、なんかキラキラしていてすごくカッコイイじゃないか! とにかくこれは一度見てみたい、という事で 休みの日にNO-MA に足を運んだ。 ★ ★ ★ 昭和初期の町家を改装したNO-MAの門をくぐり建物の中に入ると、 目当てのその作品は一番最初に展示されていた。 うわぁ… これか… スゲーちっちゃくて… カッコイイ…(!) パッと見た瞬間、まずはその小ささに驚いた。 すごく小さくて、素直にすごくカッコイイのだ。 大量に並んでいる凄みもあるし、 グッと近寄ると1体1体に造形物としての「力」をすごく感じる。 いやぁこれはすごいなぁ…とじっくりと眺めていると 受付のお姉さんが 「今、作家本人が来られていて、二階で作品を作っていますよ」 と知らせてくれた。 なんと、たまたま行ったその日のその時間に 偶然にも作家本人と遭遇(すごい偶然…)。 人形を作る様子を目の前で見せてもらって、 少しだけ話も聞くことができた。 現在20歳の勝部翔太さんは、小学1年の頃に お母さんの好物の「ナスのからし漬け」の パッケージに巻かれていた 「アルタイ」(アルミ帯でカバーされた針金)を 何気なくひねる中で、人形作りに目覚めたそうだ。 その後、素材としてまとめて売られている アルタイの束を購入し作品が増殖。 素朴なヒト型だった人形は、次第にプロポーションが進化し 装飾をまとい、現在の形に至った…ということらしい。 (ちなみに、作ったものには執着がなく、 ある程度数がまとまると 周りの人にプレゼントしてしまうのだそうです。 今回、大量に作品を展示できたのは 彼が通う福祉施設のスタッフが 密かに作品をストックしていたおかげ、とのこと。) ★ ★ ★ なんかねぇ、彼の話を聞いていると こちらの周波数と重なる部分も多く、 自分の内面がワッ!と熱くなるのを感じたね。僕は。 ビニール付きの針金を ひねって重ねる事で得られる彫塑的な造形感や 1体あたり5分くらいで作れるスピード感、 そして完成品のヌラヌラ&キラキラ光る独特の質感などを見ていると、 あぁ、彼は自分だけのモノの作り方に「出会えた」人なんだな…と しみじみ思った。 眉毛手入れ用の小さなハサミを器用に使いこなす様子も 「モノ作りの動き」として全く無駄がなく、 なるほど、ここに行き着いたんだな…と思わせる強い説得力を持っていた。 この文章がアップされる頃には展覧会は終わっていて、 現時点では今後どこで彼の作品が見れるか分からないけれど、 このサイトを見てくれているカミロボ少年たちにも ぜひ実物を見てほしいと思った。 モノ作りの楽しさがギュッと詰まった魅力的な作品で とても感動しました。