バナー
 
 
マドロネック図鑑
実戦
噛ませ犬
バックステージ
カミロボが語る
 
 
ショーウインドウのプラモデル
 
散歩の途中、たまたま通りかかった
模型屋さんのショーウインドウに目が釘付けになった。

そこには30年くらい前のプラモデルの完成品ばかりが
ゴッチャリと展示されていて、
ショーウインドウの空気ごと今の時代まで
真空パックで保存されたような気配を漂わせていた。

…空気ごと真空パック、って言葉は
メチャクチャな言葉だけど、
実際そのショーウインドウの中に詰まっている空気は
あの時代の気分のまま保存されているかのようで、
一瞬僕は今自分がどこに立っているのか
分からなくなるような感覚に襲われた。

★     ★     ★

小学生の頃、地元の商店街に洒落た感じの写真館があった。

空前のガンダムブームが僕の住む田舎町にも押し寄せてきた頃、
その写真館の小さなショーウインドウに
センスよく作られたガンダムのプラモデルが飾られるようになった。

プラモデルは、たまに新作に取り替えられる事があって、
僕はそこを通るのが楽しみになっていった。

ショーウインドウという区切られた空間に世界観を構築し
外側に発信する事が、子供心にとても魅力的に感じられたのだと思う。

★     ★     ★

僕の頭の中には空想の模型屋さんが一軒存在していて、
僕は今でもたまに、その模型屋さんに入る夢を見ることがある。

木造で薄暗いその模型屋さんには
怪しげで魅力的な模型ばかりが売られていて、
うわ、スゲー!と興奮したところで目が覚める、というのが
いつものパターンになっている。

その模型屋さんに売っている模型がどんな物なのか、
起きてから思い出せる事は一度もないのだけど、
あの模型屋さんには一体何が売っているのだろうか。

僕が欲しい物は一体なんなのだろうか…。

★     ★     ★

10年くらい前、お気に入りの小さな模型屋さんが閉店した。
おばあちゃんが一人で経営していたその模型屋さんが
ひっそりと閉店したのは、
買った模型の箱に「これサービスね」と
瓶入りの接着剤を入れてくれた直後だった。

その店の看板には「作る楽しさ、動く喜び」と書かれていたのだけど、
それって、なんか良い言葉だなぁ…と、
今でもそこを通るたびにしみじみと思い出す。

実際の看板は撤去されてなくなってしまっているけど、
もしかしたら、僕の空想の模型屋さんの看板には
今もその言葉が書かれているかもしれない、と思う。

小さなショーウインドウの上あたりに。


雑誌「Quanto」2010年7月号掲載
ショーウインドウのプラモデル
 
 
Copyright(C)2003-2009 Tomohiro Yasui / butterfly-stroke.inc All rights Reserved.