マドロネック

209「ZINEを作ってみた」

2018年11月7日

ZINEを作ってみました。

…と言っても、印刷を済ませて完成させてしまった今になっても
僕が作ったものを果たしてZINEと呼んで良いものか、
ZINEっぽいノリを満たしているのか、
その辺りがまだちょっと自分でもよく分からず
なんとも弱腰なんですけど(笑)まぁ、要するに冊子です。

作品集の冊子を作ったのです。



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お恥ずかしい話なんですけど、
実は2ヶ月くらい前まで
僕は「ZINE」という呼び名を知りませんでした。

たまたま2ヶ月前の深夜に「タモリ倶楽部」を見ていたら
ZINEの特集をやっていて

「なるほど、以前あのギャラリーで見た手作りっぽい冊子や
 あのオシャレな本屋さんに置いてあった薄い本たちは
 全てZINEと呼ばれるものだったのか…」

と、そこで初めて呼び名を認識したのです。

タモリ倶楽部では、知り合いの作家さんも紹介されていたので
視聴後すぐにその作家さんに連絡して
ZINEの事を教えてもらって、
それでようやく概要というか
全体的なイメージをつかむ事ができました。

もしかしたらこれを読んでくださっている方の中には
僕のような方もおられるかもしれないので
ZINEの説明を一応書いておきますと、

ZINE(ジン) とは個人で作った本のことで、
Magazine(雑誌)のZINEが語源なのだそうです。

内容は写真・絵・文章など、なんでも自由なんですけど
デザイン要素が強い同人誌のようなもの、と言うんでしょうかね。

コピーした紙を1冊ずつ自力でホッチキスで綴じたものや、
手書きのものなど、
あえて手作りの風合いで表現する人も多いようです。

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ZINEの制作は初めてなのですが
「出版」という枠組みで言うと
カミロボ 関連では今までに数冊の本を作ってもらってきました。



でもそれらはアートディレクターさんや
グラフィックデザイナーさんや編集者さん、ライターさんなど
その道のプロの方々に作ってもらったもので、
作者の僕は監修的な立ち位置で関わらせてもらったものばかりでした。

監修という、実作業からは少し離れた立ち位置で関わったものでも
完成までにはそれなりに手間暇かかった記憶が残っているので、
あの経験を踏まえて「自分で全部作る」ということをイメージをしてみると
あまり無邪気な気持ちのままではいられず、
ページ数の少ない冊子だとしても
やっぱりそれは苦労するだろうな…と現実的に想像するんですよね…。

「自分で冊子を作る」というのは夢が広がるけど、
自分にそんな事ができるのだろうか…

でも作ってみたいなぁ。

ちょうど11月に個展があるから
その時に作品集を販売できるように
このタイミングでちょっと頑張って作ってみるか…

編集のことや入稿のことなど
何も分からないけど、多分なんとかなるだろう…!

なによりこれは面白そうだ!

…というのが1ヶ月半くらい前の決断でした。

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「冊子」という風合いは子供の頃からすごく好きで、
小学生の頃はマンガを描いて
ホッチキスで留めて製本したりしていました。

例えばこれは小学3年生の時に描いたマンガ
「イエローサタンVSバビラス」



そしてこれは、カミロボ マニュアル本「ペーパーモデル」。

小学6年生の時に、カミロボ作りに興味を持ってくれた
3人の友達のために書いた冊子です。




今回のZINEの内容を考える段階では
小学生時代に作ったこれらの本を
そのままコピーして復刻するのも面白いかな、とも思ったのです。

でもそれは、今やらなくても良いような気もしたんですよね…

初めて作るZINEはやはり、
自分の作品をちゃんと紹介した作品集を編集するのが良いだろう、と。

今の自分にとってはそれが一番素直だろうな…。

作品の画像はたくさんあるし、
グラフィックデザインソフトのイラストレーターは一応使えるし、
今まで年賀状やDMくらいだったら普通に作ってきているから
まぁいけるだろう。

体裁についても、例えば自分でホッチキスで綴じたり
得意の「ヤスイ締め」で1冊ずつ綴じることも一瞬考えたけど、
やはりここは印刷屋さんに発注して
印刷物として普通にちゃんとしたものを作ることにしよう。

よし!それで行こう!

でもね… いざ作り始めてみると
これが結構大変で、簡単な事ではなかったのですよ…。

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何が簡単ではないかと一言で言うとですね、
「自分が文字や写真を並べるとダサい」んですよ…。

とにかくダサいんです。

タイポグラフィって言うんですか、
文字の配列や誌面構成を構築する技術やセンスが
自分には全くない事を思い知らされるんですよね…。

「ん〜… これはマズイぞ…」

と焦って、そこから手元にある雑誌や冊子の構成を研究して、
あれこれ試して、収まりどころを必死に探ることにしました。

とにかく「今の俺がオシャレな本を作ることは無理なんだから、
焦らず背伸びせずに、真面目にちゃんと作るのだ」と。

そうして気持ちを立て直して作業再開。

道は険しいなぁ…。

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そんな感じで回り道をしたり引き返したりしているうちに
なんとかある程度グラフィックは形になってきたのですが、
そうすると次は「入稿」に関しての専門知識が必要になり
ここでまた立ち止まるワケです。

印刷屋さんのホームページでも
素人に向けてのマニュアルを作ってはくれているのですが、
なにせこちらは初めての冊子入稿だから
「本当にこれで入稿したら本ができてくるのか…?」と
不安になったりもするんですよね。

あぁ分からない…不安だ、と困りながら
ここでカミロボ博士のS氏に相談。

S氏はグラフィックデザインのプロでもあり、
ウェブ関係のプロでもあり、
様々なプロジェクトを取り仕切るプロデューサーの顔も持っているので
知識も豊富でとにかく話が簡潔で明瞭なのです。

そんなS氏と僕の電話の会話を以下に再現します。
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僕「あのさぁ、本って、表紙の向こう側は裏表紙で、
  1枚めくった2ページ目と
  向こう側の31ページ目は
  1枚の紙としては繋がってるワケじゃないですか」

S 「ん? 向こう側の31ページ…?」

僕「あ、ごめん、えっとね、A5サイズで32ページの冊子を作っていて、
  真ん中をホッチキスで…」

S 「中綴じですね」

僕「あぁ、そうそう、中綴じ中綴じ。
  中綴じだったら2ページと向こう側の31ページは1枚の紙で繋がってるから
  原稿としては2ページと31ページを繋げておかないとアカンじゃないですか」

S 「面付けですね」

僕「あぁ、そうそう、面付け面付け」

S 「面付けは印刷屋さんの仕事だから、
  安居さんは素直に2ページ3ページ、
  4ページ5ページと見開きで順番に並べてレイアウトしていけばいいんですよ」

僕「え! ホントに! ホントにそれで良いの?
  じゃあさ、2ページ目と3ページ目を並べてレイアウトしたとしても
  真ん中の繋ぎ目があるじゃないですか
  繋ぎ目にかかってしまう絵や写真はどうすれば…」

S  「ノドですね」

僕「あぁ、そうそう、ノドノド」 

S  「ノドにかかる写真は左右をピッタリ合わせておけば大丈夫ですよ」

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…どうですか、この会話…。

言葉を知らない素人と、
長年の付き合いからこの男は何の話をしているのかを瞬間的に察して
言語化&返答してくれる有能なプロとの会話…

情けないねぇ…(笑)。

でもいろいろ教えてもらえて助かった…。

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というワケで、なんとか完成しました。

安居智博作品集「プラズマ・マドロネック」
A5サイズ フルカラー32ページです。

初めての冊子編集、必死のド根性DTPで頑張りました。

ZINEと呼ぶには体裁がしっかりしすぎているのでしょうか…
その辺りは今もまだちょっとよく分からないけど。



完成した作品集は開催中の個展で販売しています。
よかったら一度手に取っていただけたらと思います。

安居智博作品展「プラズマ・マドロネック」
ー 立体造形・絵・刺繍・マスク・カミロボ ・その他分類できないものなど ー

2018年11月3日(土)〜11月11日(日)
ギャラリーDAIMON
www.gallery-daimon.com