今年もまた「JAGDA Kawara Exhibition」の季節が
やってきました。
数えてみたら、今回で9作品目になるようですね。
ここ数年の作品を振り返ってみると、
ラス&べガスの「ラス」
「紙の仏像」「オルゴメリゴ」と
カチッとしたラインを追求して作ってきたので、
今回はちょっと作風を変えてみようかと思い、
新たな表現に見合ったキャラクターを選ぶところから
作業をスタートさせました。
★ ★ ★
今回のモチーフに選んだのは、
カミロボレスラーの「ザリガ・ロッソ」です。
ロッソはイタリア語で「赤」なので、
まぁ要するに「赤いザリガニ」という名前の
キャラクターです。
イタリアとザリガニは直接関係ないのだけど、
アメリカザリガニの色と
僕の好きな「チンザノロッソ」というお酒の
深い赤色のイメージが重なったので
ザリガ・ロッソと命名しました。
カミロボ界には、他にも
「魔王」とか「電気舞乱(デンキブラン)」とか
お酒の名前を拝借したキャラクターが何体かいますが、
命名法だけで言うとザリガ・ロッソも
その一つだと言えるでしょうね。
★ ★ ★
今回、ザリガニモチーフの瓦を作るにあたって
最初にイメージした風合いは、
明治時代の金属工芸に見られるような
甲殻類の表現です。
「硬質感のある生っぽさ」と言うのでしょうか。
鍛造された金属工芸風のディテールと
瓦のいぶし銀の鈍い輝きを
合わすことができたらいいなぁ…
…とイメージを膨らませて
粘土を触り始めたのだけど…
実際やってみるとこれがなかなか上手くいかない…
ヤバい… これ、失敗するパターンのヤツか…
う~ん… これは… 昨年まで積み上げてきた
安定した表現方法で作った方が良いのだろうか…
と、冷や汗を流しながらも
「いや、最後にはきっと上手くいくはずだ!」と
自分を鼓舞して作業する日々…。
まぁ、ちょっとくらいスベったとしても
どうってことないのだから、
思い切って攻めていこう!俺!
★ ★ ★
というワケで、例年以上に手こずりましたが
なんとか完成しました。
画像は焼成前の、まだ水分を含んでいる状態になります。
今回の一番の苦労は、やはりトゲトゲでしたね。
業者さんから届いたばかりの瓦粘土はかなり柔らかく、
指先に粘り着くような
独得の扱いにくさがあるので、
「本体から無数のトゲを生やす」という表現には
向いていないんですよね。
それでも最終的には
瓦粘土の素材的な短所を
逆に利用するアイデアが奇跡的に浮かんだので、
ギリギリの所でなんとかカタチにすることができました。
例によって、デザイン要素を
抽出・再構築する方法で作っているので、
元のザリガ・ロッソとは全然別物になっていますが(笑)
まぁ、ヘルメットを脱いだら
中身はこんな風になっているんですよ… おそらく。
( ↑ その場しのぎの適当な設定…)
★ ★ ★
そして、今回は最後にオマケエピソードが…。
完成させてから納品までの数日間、
急激に乾燥させないように
ビニールを被せた状態で置いておいたら、
瓦の額のあたりから
ものすごく小さな(2ミリくらいの)
カイワレ大根みたいな葉っぱが
生えているのを発見したのです。
おそらく、瓦粘土の中に紛れていた何かの種が、
高温多湿のビニールハウス的な状況の中で目覚めて
発芽したみたいですね。
これはちょっと面白かったのでパシャッと記念撮影。
なんとなく、ジブリ作品の
「自然と文明」的なイメージを思い出させるねぇ…。
じっと見てたら、腕や額から1本だけ生えてくる
「幸運の毛」みたいな感じがしてきたので、
運が逃げないようにそのままの状態で納品しました。
どっちにしても焼成前の乾燥作業で枯れてしまうんだろうけどね…。
★ ★ ★
「JAGDA Kawara Exhibition 2016 東京ミッドタウン展」は
2016年10月14日(金)〜11月6日(日)まで
東京ミッドタウン・ガーデン 遊歩道水路にて展示されます。
是非お越しくださいませ。 |